スポーツ用品
カスタムオーダーシミュレーションで実店舗のように選ぶ楽しさを。
サイトリニューアルにより販路拡大に成功した老舗弓具メーカーの挑戦。
弓道で使用する弓や矢を手掛ける老舗弓具メーカーの小山弓具様。コロナ禍で販路の要である実店舗の営業が制限される状況にありながら、EC-CUBEを活用したサイトリニューアルによって売上拡大に成功しました。サイトリニューアル成功の鍵はどこにあるのか。小山弓具様と、ECサイトリニューアルを手掛けたトエビス株式会社様にお話を伺いました。
お客様情報
- 株式会社小山弓具
- 1780年(安永9年)の創業以来、200年以上にわたり日本の弓道界を支えてきた弓具のリーディングカンパニー。地方から東京の店舗に足を運ぶ方も多く、業界でもトップクラスのシェアを誇る。現在の社長は九代目。
- トエビス株式会社
- webサイト制作をはじめ、ブランディングやマーケティングまでワンストップで手掛けるクリエイエティブカンパニー。「1世紀を超えたお付き合い」をモットーに大手企業サイトなども数多く手掛けている。社名は商売繁盛の神様である「恵比寿さま」に由来する。
サイトの老朽化により浮かび上がってきた課題
─リニューアル前からECサイトをお持ちだったとのことですが、どのような課題があったのでしょうか?
株式会社小山弓具 須賀様
小山弓具様:以前はEC専用サイトではなく、コーポレートサイト内でECサイトを運用していました。サイトは15年以上前に開設したので当時は弓具界では進んでいた取り組みだったと思いますが、開設から時間が経過したことであらゆる面で課題が出てきていました。
デザイン面では当時のテイストのままでいわゆる「古いデザイン」でしたし、スマホ対応もできていない状態でした。システムが古いことでアップデートもできず更新時に不具合が出るなど、業務にも少なからず支障が出てきていましたね。
特に課題として大きかったのはやはりEC機能周りです。弊社は実店舗での対面接客を大切にしているのですが、遠方など物理的に来店が難しい方にとってオンラインショップは貴重な存在でした。
しかし、当時は使用できる決済方法が限られ、クレジットカード払いができないなど利便性に難がありました。また、学生様などは自分の道具を見分けるためや、こだわりのためにカスタムオーダーをされるケースが少なくないのですが、各製品の写真も小さく、オーダーした商品のイメージを確認するためのweb上のシミュレーターがなかったので、かなり使いにくいサイトになってしまっていました。
リニューアルを通して感じたコミュニケーションの大切さ
-そのような課題を抱えていたなかで、サイトリニューアルをトエビス様へお願いした決め手はどこにありましたか?
小山弓具様:課題のなかでも決済方法の拡充と、写真の質と量の向上は必須でしたが、技術的に最もネックになったのはシミュレーターを含めたカスタムオーダー機能の実現でした。オーダーができるのは自社工場をもつ弊社ならではの強みです。他の弓具屋さんでできることではないので特にこだわりたかった部分でした。
トエビス様とは現在のコーポレートサイト制作会社様の紹介で出会いました。事前に他の業者様ともお話ししていたのですが相性や条件が合わず、頭を抱えていたなかで「カスタムオーダー機能も対応可能です」とトエビス様から快い返答をいただいたことで道が開けました。
また、webの知識がないため初歩的な質問をしてしまうことがあるのですが、トエビス様は専門用語がわからない私達のためにわかりやすいレジュメをご用意してくださったり、こちらの曖昧な要望を汲み取ったうえで具体的な提案をしてくださいました。
技術的な要件を満たしていたというのはもちろんですが、ご対応の柔らかさや親身にお話を聞いてくださる姿勢が決め手になりましたね。
─専門的な説明をする際は意図せず押し付けるような形になってしまうこともあります。そのような状態に陥らないようにトエビス様も意識されているのでしょうか?
トエビス株式会社 谷井様
トエビス様:お客様の立場に立つことは常に意識しています。サイト構築だけでなく、EC機能などのシステム導入となるとどうしても内容が複雑になってきます。webに詳しくないお客様なら混乱してしまうのは無理もありません。だからこそお客様にもわかる表現でしっかりご納得いただくことが重要です。
要件に応じて仕様書や設計図をしっかり作成していくことは必須ですが、それよりも大事なのは「誰が使うのか」「なんのために使うのか」を忘れないことです。無機質に思えるシステムもそれを使用する人がいてはじめて成り立つもの。だからこそお客様とのコミュニケーションは特に大事にしていきたいと思っています。
-サイトリニューアルはコミュニケーションの連続だと思います。特に小山弓具様の場合はカスタムオーダーの実現や、専門商品である弓具を扱うことから完成までご苦労された部分も多かったのではないでしょうか?
小山弓具様:公開日も決まっていたので毎日が戦いでした。専門用語が出るたびに心が折れそうでしたが、ひとつひとつトエビス様に質問しながら進めていきました。初歩的な質問もトエビス様は粘り強く、わかりやすくお答えいただき本当に助かりました。
逆に弓具も専門性が高いため、私達からもトエビス様にはわかりやすい説明を心がけていましたね。 また、弓具という製品の特性上、一般的なカスタムオーダーより選択肢が多くなりました。膨大な製品をすべて撮影しひとつずつ登録していく過程はとても大変でしたが、そのぶんサイトへの愛着もわきましたね。
トエビス様:私たち自身も弓具のサイトを手掛けるのははじめてでしたので、弓道関連のリサーチなども行いました。その結果、お互いわからない点を理解し合いながら二人三脚で進められました。「後はおまかせします」といった姿勢ではなく、双方が積極的に意見を交わしながらサイトに反映していったことが高いクオリティにつながったと思います。
技術的な面で言えば、送料の設定に苦労しました。大型商品も多数あり、送料を細かく設定できるようにする必要があったためです。ただ、このあたりもリサーチをしていたことで項目分けのルールなどを設定しやすかったです。
目指したのは店舗のようなオーダー体験。
EC-CUBEを活用することで細かな設計を実現。
─お話を伺うとEC機能をはじめ、サイト要件を満たすには細かなカスタマイズが必要だったとお見受けします。EC-CUBEを採用された理由もカスタマイズ性にあったのでしょうか?
トエビス様:そうですね。カスタムオーダーを実装するにあたり、ただ機能を実装するだけでなく細かなカスタマイズとリッチな表現を実現できるシステムが必要でした。
EC-CUBEを用いて細かい部分のカスマイズまで実装に
そのような要件を満たすにはEC-CUBEが最適と判断し、弊社から小山弓具様へ提案させていただきました。
小山弓具様:カスタムオーダー機能に加え、EC-CUBEのカスタマイズの自由さが決め手になりました。EC-CUBE以外にも簡単にECを実装できるサービスはありましたが、弊社は弓具界では歴史もあり、支持してくださるお客様も数多くいらっしゃいますので、ブランディングの意味でも中途半端なものは作れないという意識がありました。
クオリティの高いサイトを実現できたのは、トエビス様のご尽力はもちろん、EC-CUBEの自由度の高さも要因のひとつだと思います。そのような意味でEC-CUBEを採用してよかったですね。
受注数増加に加え顧客層の拡大にも成功。買い物する楽しさが生まれました。
─リニューアル後のサイトを拝見するとビジュアル面でも機能面でも非常にクオリティが高いです。リニューアル後の売上の変化や、お客様からの反応などはありましたか?
小山弓具様:お客様目線でも使いやすいサイトになり、実際にお客様からも「見やすくなりました」とご意見いただくことが増えました。
選ぶ楽しさも生まれたリッチかつ見やすいデザイン
売上の面でも成果が見え始め、リニューアル後にカスタムオーダーの受注数が増えました。現在は利用される決済手段のうち、以前のサイトにはなかった「クレジット決済」「コンビニ決済」が9割近くを占めるようになりました。リニューアルによる決済の利便性向上の効果は大きかったですね。
さらに受注数の増加に加え、これまで問い合わせのなかった地域からも購入いただけるようになったことも成果のひとつです。以前は関東近郊からの受注が主でしたが、現在は北海道から沖縄まで全国各地からご注文いただいています。
弓具は決して安価ではないため、近隣のお店へ足を運び目で見てから購入する方も多く、いわば地域性の強い商品です。そのような背景がありながら全国からの受注が増加している要因は、決済のしやすさに加え、カスタムオーダー機能の充実にあると思います。
─カスタムオーダーは特にこだわった部分だけに反響が大きいのは嬉しいですね。Web上では実店舗に近い形でカスタムオーダーができるのでしょうか?
小山弓具様:ほぼ遜色ないですね。弓の色など肉眼でないと判断できないような非常に繊細な一部の商品は別として、実店舗でのオーダーに近い体験を再現できています。
購入前の完成イメージもより明確に
リニューアル前に比べ選択肢も増え、写真のクオリティも大きく向上しました。オーダー品完成のシミュレーションが導入されたことでweb上でも「選ぶ楽しさ」「買い物をする楽しさ」が生まれました。弓具は金額も安くはないため、完成品のイメージをweb上で事前に確認できることが購入の後押しになっていると思います。
サイトは完成してからがスタート。
弓道をはじめるきっかけになるようなサイトに育てたい。
─リニューアルに伴い、これまでは把握できなかったデータも取得できるようになったと思います。最後に、データ活用など今後の展開について考えていることがあればぜひ伺いたいです。
小山弓具様:これからはデータを踏まえてページの充実や製品開発に活かしていきたいです。詳細な分析はできていないのですが、コロナ禍の影響か、弓具のメンテナンス用品などが以前より売れていたり、実店舗とwebサイトで売上動向が異なるなど興味深いデータも見受けられます。
リニューアルまでは完成させるだけで精一杯でしたが、今後はよりお客様のニーズに応えられるよう、店舗のみで販売していた商品をECサイトでも取り扱うようにしたり、カスタムオーダーで選択出来るパーツのバリエーションを増やすなど、更なる内容の充実を目指していきたいですね。
弓具はどうしても弓道競技者に購入ターゲットが限られていますが、サイトをさらに見やすくすることで弓道の敷居の高さを下げ、これから弓道を始める方、弓道に興味を持っている方向けのコンテンツも増やしていきたいです。弊社のサイトがきっかけで弓道を始める方が増えればとても嬉しいです。
運用するなかでカスタムオーダー用のパーツの追加が必要など、さらなる改善点も見えてきているので、現在もトエビス様には週に1回ほどの頻度でご相談に乗っていただいています。作って終わりではなく、今後も良きパートナーとして末永くお付き合いしていきたいですね。
トエビス様:いまはECサイトを自社で持ちたい会社様がとても多くなっています。様々なサービスが登場するなかで気軽にはじめられるようになり、発送や倉庫管理まで委託することすら可能になっています。
しかし、構築や運営の過程の理解、完成後のサイトへの愛着は、オーナー様に制作段階から前のめりに関わっていただいたからこそ得られるものです。小山弓具様のように一緒にサイトを作っていく姿勢は、オープンしてからの運用を成功させるためにも非常に重要です。サイトは完成して終わりではありません。今後も相互に意見を交わしながら、より良いサイトへ育てていければと思っています。
おわりに
印象的だったのは「選ぶ楽しさ」「買い物をする楽しさ」という言葉。ECサイトは要件を満たすだけの画一的なサイトになることも少なくありませんが、買い物は本来無機質なものではなく、実店舗のように買い物する楽しさも重要な要素のひとつなのだと改めて感じさせられました。
見ているだけでもワクワクするような血の通ったサイトは、小山弓具様とトエビス様が制作の過程でコミュニケーションを積み重ねたからこそ生まれたのだと思います。双方が積極的に意見を出し合い、サイトをより良いものに高めていく。サイト構築におけるひとつの理想形を見た気がします。
EC-CUBEがその一翼を担うことができたのはとても光栄です。EC-CUBEは今後もお客様の要望を形にできるようなサービスを目指して参ります。
インタビュアー : 株式会社スプー 川崎和哉
https://www.spoo.co.jp/